父は編集者で母は校閲者だった。両親ともフリーだった。
出版業界の人だった。言葉の世界は窮屈に思えて、反発心から美大に行った。映像の仕事に就いた。今とある本をもとに映像作品を作る企画を進めていて、何かの参考になるかなと思ってうちの近くのおしゃれ本屋さんで行われるトークイベントに出かけてみた。私は自分の家庭環境に起因してインテリ左翼のおじさんたちの上から目線や押し付けがましさみたいなのが大嫌いなのでそんな雰囲気だったらどうしようって思っていたけど、イベントは思った以上にゆるくてのんびりしていて心に優しかった。本屋さんの雰囲気は心底からホッとできるもので、自分が相当スマホやネット社会に精神が侵されてることを自覚した。何かとシステムに感情が振り回されて、本質的なことが見えなくなっている、というか。
お金がもらえる仕事は手放せないけど、その他SNSを使って何かするとか、映像と絡めてなんかやるとか、なんかそういうのはやらなくていいことだなーと思った。がんばらなくていいことはがんばらない。ゆっくりしよう。涼しくなったら考えればいいや。
そんなことをつらつら思いながら眠って、今朝目覚めたら、介護で帰省している友人のお父さんが亡くなったという知らせをもらった。何をどう言ったらいいかわからなくて、涙が出た。私の父も夏に死んだ。もう26年前の出来事だけど、命日が近づくとなんとなくハラハラする。私は生真面目がすぎるのが父譲りで夏は丸ごと鬼門なのです。近づきすぎてはいけない。